テレビの制作ADを辞めた理由

■辞めた理由

自分を大切に出来ない環境だと思ったから。

毎週必ず一回は夜勤(27時間不眠労働)があり、それ以外の日でも非効率な長時間労働がある。

この類の労働環境は覚悟していたが、会社規定の「月215時間以上働くと業務停止命令が下される」ことについて疑問点が浮かんだ。

 

普通に仕事をしていれば月215時間は優に超えるため、ここで働く人は、勤務表に休憩時間を多めに入力することでこの月215時間を超えないようにしている。業務停止命令が下ると人員が足りず番組が回らなくなるため、このようなことをしている。これが当たり前になっている。

 

みなし残業とはいえ、そのボーダーを数字上超えないようにしているのであれば、どれだけ働いても給料も増えず、身体が疲弊するだけだと思った。労働時間を虚偽報告しなければならない理由が分からない。

 

 

現に会社の同期が1人体調不良で辞め、1人が実家で自宅療養している状態(慢性的に続く頭痛、めまい、睡眠薬が無いと眠られない)である。人ごとでは無いと思う。

加えて、人を人として扱えない人間が多いこと、3日先の日程すら分からない労働環境、昇進していったところで忙しさに拍車がかかるだけということ。先は無いと思った。

 

 

 

自分の中で1番大きな出来事として、学生時代から視聴しており、今でも大好きなバラエティ番組「ガキの使いやあらへんで」がある。この番組によってお笑いに目覚め、「松本人志と仕事をしたい」と思うようになり、マスコミ業界を目指すようになった。

働く以前は、長時間労働など「ずっとテレビに触れられる時間があって良い」としか捉えていなかったが、実際に働いてみると、バラエティ色が強ければ強いほど労働時間が長くなる傾向があると分かり、自分の体調面の不安や自分の時間が奪われることに違和感を覚えるようになった。

 

 

バラエティ番組で働く人の月労働時間はMAXで400〜500時間まで登り、自分には真似出来ないと思った。そこまで自分を犠牲にしてまで突き詰められるものじゃないと思った。自分よりも大切なものは無い。

 

自分が憧れていたものは、たくさんのテレビマンが命を削って生み出したものだと分かったが、「自分はそれと同じことをするつもりがない」と感じた瞬間にこの業界にいる意味が無いと思った。

 

 

 

何故このような労働環境でも人が集まるのか。2点あると思う。

 

1つは「夢を売る仕事」だから。小さな時から見ていたテレビ番組の制作に携われるのは滅多に出来ない経験だと思う。さらに、仕事を通して芸能人や有名タレントに会える事が大きな要因としてあると思う。自分はそこまでミーハーでは無いので、ここには全く惹かれなかった。

 

2つ目は「放送権」を持っているのがテレビ局しかないから。全国民が見るような媒体で人の娯楽を作ることがテレビでしか出来ないから、それを求める人はどんな労働環境であれ、そこで働くことを選ぶのだと思う。

 

 

業界の中へ飛び込んでみると、この職種には特殊技能は必要なく、どんな人でも入って来れることも分かった。特殊技能が無くとも、昼夜問わず長時間働くことで給料をもらっている。

 

終わりに。

この業界で働く人を尊敬しているし、大好きな友人もいるので、健康を害さない範囲で頑張って欲しい。

変わらずテレビは大好きだ。ただ、自分が続けられないだけ。